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「運転する車じゃない、乗る車」——17万kmでもセンチュリー(V12)が最高すぎた

愛's MAGAZINE編集部

「これは、運転する車じゃない」——。動画の冒頭から、社長がそう言い切った一台が今回の主役です。トヨタ・センチュリー。平成19年式(2007年)、走行はなんと17万km超え。それでも「最高すぎた」と唸らせる、V12エンジンを積んだ日本の最高級セダンです。今回はいつもの商品車レビューとは少し毛色が違います。社長の20年来の後輩が乗り換えるための一台を、納車前にじっくり見ていく回。中古のセンチュリーがどんな車なのか、そして「200万円乗り出し」という価格は高いのか安いのか。実車の細部まで、包み隠さずご紹介します。

ヤクザの車じゃない。V12を積んだ日本の最高級車

黒いトヨタ・センチュリー標準仕様車と社長
威風堂々たる佇まいのトヨタ・センチュリー。V12を積んだ日本の最高級ショーファーカー。

「センチュリー」と聞いて、思わず身構えてしまう方もいるかもしれません。動画でも開口一番「ヤクザじゃないですよ」とツッコミが入るほど。でも、その正体はトヨタが威信をかけて造る、押しも押されもせぬ最高級ショーファーカーです。政財界の要人や、大企業の社長が「後ろに乗る」ための車。だからこそ社長も、この車を前にして「運転する車じゃねえよな」「乗る車ですよね」と口をそろえます。

最大の見どころは、なんといってもV型12気筒エンジン。量産乗用車でV12を積むのは、世界を見渡してもごくわずか。国産車ではセンチュリーだけの特権です。「限られた職人が手作業で組み上げる」とよく言われるとおり、セルを回した後のエンジン音は、社長も「なんとも言えない」と言葉に詰まるほど。派手さではなく、あくまで静かで上品な存在感。それがセンチュリーというクルマの流儀です。

平成19年式・17万km超。この一台の素性

センチュリーのメーター 走行17万7200km表示
メーター表示は17万7200km。それでもシートや内装は美しいコンディションを保っていた。

今回の個体は、平成19年式(2007年)のセンチュリー標準仕様車。ボディカラーは、いかにもセンチュリーらしい深みのある黒です。全長はおよそ5メートル30。目の前にすると「でけえな、しかし」と声が出るサイズ感で、堂々たる押し出しがあります。

走行距離は、メーターの表示で17万7200km。数字だけ見れば「さすがに多いのでは」と身構えるところですが、そこはセンチュリー。もともと丁寧に扱われる車格ですし、この個体もシートや内張りがとても綺麗な状態を保っていました。社長も「シート綺麗な気がするけどな」「欠品とかせずに」と、コンディションには納得の様子。走行17万kmでも十分に狙えるのが、この車の懐の深さです。

ちなみに、気になる新車価格。社長いわく「今のセンチュリー(SUV)だと6000万〜7000万円くらいするよね」とのこと。この年式の頃でも、新車ならおよそ1500万円クラスだったと見られます(正確な当時価格は諸説あり)。それを思えば、中古で手が届く今の相場は、なかなかに夢のある話です。

前期ベースを「後期仕様」に。だから割安に仕上がる

センチュリー後期型のLEDテールランプ
後期型はテールランプがLED化。この個体は前期ベースながら、外装が後期仕様に仕立てられていた。

ここが、目利きの社長らしい着眼点です。この個体はもともと前期型。ですが、外装がすでに後期仕様に仕立て直されているのがポイントでした。後期はテールランプがLEDになるなど、顔つき・後ろ姿がぐっと今風になります。

社長は「どっちみち後期仕様にしようと思っていた」ので、最初から後期仕様になっているこの個体は部品代も加工の手間もかからない——つまり、その分お得というわけです。ミラーの話も面白いところ。前期の「フェンダーミラー」仕様は相場が安めですが、この個体はドアミラー化された黒。条件の良い黒のセンチュリーは、やはり価格も強気になりがちです。

仕入れはオークション。社長も「正直、ひたすら競って、周りに『え、え、え?』って言われた」と苦笑い。それでも「付き合いだから、多少超えてもいいや」とほぼ押し切って落札したそうです。センチュリーはそもそも球数が多くありません。「これを逃したら、次はなかなか出てこない」。その判断が、この一台を連れて帰ってきました。

前オーナーは30代半ば、平成一桁生まれの方だったとのこと。「その割には、けっこうノーマルじゃないですか」という指摘に、社長は「いや、ノーマルが逆にいいんでしょ」。ただ一点、タイヤだけは「ミネルバとか、安いやつが付いてる」と鋭い観察。「本物の法人車ならレグノ(プレミアムタイヤ)を履く」——そんな細かい部分から車の素性を読み解くのが、プロの目利きです。

主役は後席。マッサージ・電動カーテン・テレビまで

センチュリーの広々とした後席と木目調の内装
主役はやはり後席。木目調のパネルと電動カーテン、後席テレビまで備える「動く応接室」。

センチュリーの真骨頂は、やはり後席です。「これの醍醐味、俺は後ろでしょ」と、社長も迷わずリアシートへ。乗り込んだ瞬間の第一声が「広い」でした。

装備がまた、いちいち豪華です。後席にはテレビとバニティミラー、そして電動カーテン。極めつけはシートのマッサージ機能です。「リフレッシング」と書かれたスイッチを押すと、シートがブルブルと震え出し、社長も「あ、気持ちいいこれ」「めっちゃいいこれ」と大興奮。「まるで家のマッサージ機みたい」と、思わず声が漏れるほどの快適さでした。

シートヒーターは運転席と後席の両方に完備。エアコンやスイッチの表記が全部「漢字」なのも、いかにも国産最高級車らしい趣です。「日本って感じですね」と、細部まで日本流のおもてなしが徹底されています。後席のシートも「ボヨンとくる」独特のクッション性で、降りやすさまで計算し尽くされているのだとか。後で運転席から後席へ乗り換えた社長は、「これ寝れる。どこまでも行ける」と、すっかりくつろぎモード。まさに「動く応接室」です。

「用心は左」。重いドアとオートクロージャーの秘密

センチュリーの刻印が入った純正カセットデッキ
後席で見つけた純正カセットデッキ。しっかり「CENTURY」の刻印入りで、今なお現役だ。

細かい部分にも、センチュリーならではの物語が詰まっています。この個体、ドアのオートクロージャー(半ドアを自動で閉める機構)が、なぜか左後ろの一枚だけに付いていました。

「なぜ左後ろだけ?」と思いきや、これがセンチュリーの流儀。VIPが乗るのは、路肩に寄せて停めたときの左後席だからです。「用心は左」——要人が安全に乗り降りする側にだけ、手厚い装備が奢られている。そう考えると、妙に納得してしまいます。もっとも、ドア自体は「全部めちゃくちゃ重い」そうで、その重厚さもまた高級車の証です。

トランクを開ければ、これまた「すげー広い」空間。センターコンソールには、まるで会社の役員名のようなスイッチ類も。そして極めつけは、純正の「カセットデッキ」が今なお残っていたこと。「センチュリー」の刻印入りで、社長も「これがちゃんと付いてるのは、逆にすごいのかも」と感心しきり。17万kmを走ってなお、装備がきちんと生きている——それがこの個体の底力です。

静けさとV12。運転して分かった意外な扱いやすさ

センチュリーの運転席 木目のステアリングとダッシュボード
ウッドをあしらった上質な運転席。V12のセルを回した瞬間の静けさは格別だった。

「乗る車」と言いつつ、後半では社長が実際にハンドルを握りました。ドアを閉めた瞬間、まず驚くのがその静けさ。「無音感がすごい」「秘匿性がすごい」と、外界から切り離されたような密閉感です。乗り味は終始フワフワと柔らかエアサス(エアサスペンション)ならではの、しっとりと沈み込む上質な乗り心地です。

そして、いざ踏み込めばV12の実力が顔を出します。「ちょっと踏んだだけで、やっぱりV12だからすごい進む」。巨体を感じさせない、余裕たっぷりの加速です。全長5メートル超えと聞くと身構えますが、「そんなにバカみたいにデカくはない」「小回りが意外と効く」と、運転そのものは思いのほか素直だったそう。鼻先(ボンネット)が長いぶん、車高を落とすような改造には気を使いますが、ノーマルのまま乗るなら、街中でも意外と持て余しません。

結論として社長が出したのは、やっぱり「運転する車じゃない。でも後ろに乗ると、めちゃめちゃ快適」という一言。後席でマッサージを浴びながら、どこまでも行けそうな——そんな唯一無二の移動空間でした。

ミニから乗り換え。この車を選んだ後輩の物語

この一台の買い手は、社長が10代の頃、幕張の交差点で出会った20年来の後輩。当時はお互い走り屋で、彼は初代の180SX、社長は90系マークII。それが今では二人ともいい歳になり、彼はここまでミニ(MINI)に乗っていました。

乗り換えの理由が、なんとも人間くさいのです。ミニは「狭いな」と思って買ったものの、一番下の1歳のお子さんのチャイルドシートを付けたら、自分が前に行かないと運転できない——。お子さんは小5・小3に加えて1〜2歳と、にぎやかな4人。そこで白羽の矢が立ったのが、後席がとにかく広いセンチュリーでした。しかも彼、これで通勤にも使うというから驚きです。

某メーカー勤務で乗れる車種に縛りがあり、「もう欲しい車がない」という彼が行き着いた答えがV12のセンチュリー。社長いわく「朝4時に来て車を置いて電車で帰る」ほどエネルギッシュでタフな人物。手放したミニ(可変バルブマフラー付き・車検対応)は、店で210万円ほどで売りに出す予定だそうです。好きな車に本気で向き合う——そんな一人のカーライフに、この店はとことん付き合います。

200万円乗り出しは、高いのか安いのか

気になる価格は、乗り出しでおよそ200万円。走行17万km・平成19年式という数字だけを見れば「高い」と感じる方もいるでしょう。ですが、これは新車で1500万円クラスだったV12・日本最高級車が、この価格で手に入るということでもあります。しかも外装は後期仕様、内装のコンディションも良好、装備は全部生きている。そう考えれば、決して高すぎる買い物ではありません。

今回のように、好きな車を、予算に合わせて仕入れ、仕立てて届ける。ときにはオークションで押し切ってでも、狙った一台を探し出す——それが、愛’s Countryの仕事です。「センチュリーが欲しい」という一人の想いに、社長が本気で応えた。この記事の一台は、そんな仕事の結晶でもあります。

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